アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

農業

放射線育種って何?

以前、「あきたこまちR 放射線育種が利用されていますが、それが何か?」というエントリーであきたこまちRが育成された方法と、その育種親に使われたコシヒカリ環1号が放射線を利用した育種方法で育成されたこと、それに全く問題がないことをお話しさせて…

種子法廃止に伴う種苗法の付帯決議について

夫婦での北海道旅行が楽しすぎて、こっちの更新が滞っていたがんちゃんです。 前回、種子法廃止法案の付帯決議につてお話しさせていただきました。 実は改正種苗法の施行時にも、種子法廃止後も都道府県に対し適切な措置を行えるよう国会で付帯決議をしてい…

種子法を廃止する法律案への付帯決議について

また家族(猫)が増えましたが、たまたままた黒猫になってしまったがんちゃんです。 新しい家族のポコさんと先住猫1号のコピさん、2号のミルさんです。 フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) 主要農作物種子法、いわゆる種子法の廃止は様々な議論を呼び起…

あきたこまちR 放射線育種が利用されていますが、それが何か?

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) 台風の低気圧が少々辛いがんちゃんです。 秋田県は、あきたこまちをベースとしてカドミウムの吸収を抑制した水稲品種「あきたこまちR」を開発しました。これは、国が開発したカドミウム低吸収性品種のコシヒカリ環1…

閾値についての個人的な考え方 何かに例えてみれば

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) 猛暑の中での外仕事で疲れは溜まってるのに痩せないがんちゃんです。 もう何十年も前から農薬で、ここ10年程は放射線量で人体への影響がある量というものがしきりに議論になっています。危険をあおる側は影響量や毒…

ホタテパウダーは農薬を落とす? そもそも市販農作物には農薬はほぼ残留していないが

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) 1年以上放置していて、ようやく更新したがんちゃんです。 最近、SNSで現役のお医者さんが日本の農作物は農薬が多量に残留していて危険である、ホタテパウダーを水に溶いて洗浄すれば農薬が落とせて安全になる旨を発…

種苗法5 表示の義務化、特性表、訂正、判定制度の導入など

よーし書けたぜ。いよいよ送信だ…(スマホでは書いていません) フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com) さて、種苗法の解説も5回目(昨年のも含めると6回目)となりました。主要な部分についてはあらかた説明し終わったと思いますので、残りは飛ばしたり、簡…

種苗法4 「登録品種の増殖は許諾に基づき行う」

さて、4回目となる今回は農水省のpdf改正種苗法について~法改正の概要と留意点~11ページの項目から、「3 登録品種の増殖は許諾に基づき行う」についてのお話です。 以前のエントリー「農家さん、ご心配なく。種苗法の一部を改正する法律案についての解説…

種苗法3 国内の栽培地域指定について

さて、ここまで種苗法の存在意義と海外持ち出し制限、その根拠となるUOPV条約について解説しました。今回は、農水省のpdf改正種苗法について~法改正の概要と留意点~11ページの項目から、国内の栽培地域指定についてとそれ以降の項目について順を追ってやっ…

種苗法改正について2 UPOV条約と海外持ち出し制限

今回のエントリーは前回の続きです。今年度行われる種苗法改正施行について、どのような目的でどのような改正が行われたのかをお話ししてみましょう。 agriscientist.hatenablog.jp 農水省のpdf8ページ目に「我が国で開発された優良品種の海外流出」という…

種苗法はなんのために存在するのか、そして改正法の要点は?

種苗法改正について以前のエントリーで取り上げ、登録品種の自家採種は原則禁止になる、というのは一般的な生産者にとっての不利益はまずありえないということを解説させてもらいました。その後、一部の条文について施行(令和3年4月1日)が近づいていま…

福岡から出荷された春菊に「基準値の180倍」の農薬が検出された意味

先日、JAくるめを通して出荷された春菊から残留基準値を超えるイソキサチオンが検出されました。当エントリーではこれについての考察をしてみたいと思います。 www.recall.caa.go.jp フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)Twitterでフォロワーさんから要請…

農家さん、ご心配なく。種苗法の一部を改正する法律案についての解説

最近、ニュースやSNSなどで種苗法の改正が取りざたされています。生産農家の権利が著しく制限され、大きな不利益を被るのではないかという論調がちょくちょく見られます。 フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)結論から言うと、今までとほとんど変わるこ…

農業生産現場における新型コロナウイルス (COVID-19)対策について

昨年暮れに最初に中国で発生が確認された新型コロナウイルス(COVID-19)による肺炎は、現在世界中に拡散し、日本もその影響を免れていません。2020年4月22日現在で、日本は感染者数、死亡者数ともに低く抑えていて、今のところ健闘していると言えるでしょう。…

新芽を食べる ~地面からにょきにょきアスパラガス~

今回はアスパラガスです。申し訳ないですが、一品目でのご紹介。 野菜解説シリーズ、今回は少し趣を変えてアスパラガス単独でやってみます。古い分類でユリ科野菜とするとネギ属はすでにやってしまったし、クサスギカズラ科とするとこれしかない。軟化・芽も…

じつは花を食べている。イチゴは果物?野菜?

まずはイチゴの分類について イチゴは果物では?と思われる方もおられるかもしれませんが、日本の園芸における分類では草本性作物(樹木にならないもの)は野菜に分類されます。なので、メロン、スイカなども野菜ということになります。現在栽培、流通されてい…

葉っぱを食べる ~煮物、炊き物、炒め物~

今回は菜っ葉類をお送りします。それにしても、アブラナ科は分類が本当に難しい。ほとんどの花はナバナとして食べられるし、葉っぱも同様。後は根さえ太れば・・・。というわけで、「たまたま」葉を食べられるようになったアブラナ科とアカザ科のほうれん草…

葉が玉になる ~アブラナ科結球野菜~

数年前、Twitterで野菜の来歴を解説していく、というシリーズを展開したことがありました。それらをブログに転載していくというのをやろうやろうと思いながら、トゥギャッターにまとめられてるので良いかな、とやり過ごしてきましたが、ネタが無いときはこれ…

平成の農業を振り返ってみて

ずいぶん更新頻度が落ちてしまっていますが、とりあえず生きていることの証明のために何か書かねば、ということでつらつらと思いつくままに。 昨年一年間を通して、またその少し前からの感覚として、やはり温暖化の影響を感じざるを得ません。ここのところ暖…

最近流行りの「スマート農業」って何でしょう?

最近、スマート農業という言葉をよく耳にするようになりました。これは、我々のような農業関係者以外ではそうでもないかもしれませんが、これから先、特に日本のような特殊な環境で農業を持続的なものとしていくために、また世界的に見ればまだまだ増加して…

植物のワクチン接種による免疫獲得とは?

植物のワクチン接種による免疫獲得について、ツイッターで自分の記憶で語ったことにちょっとした(ちょっとではないかも)誤謬があり、相互フォローのBernardo Domorno(@Dominique_Domon)さんに間違いをご指摘いただいたのでいろいろ調べてみました。そこで、…

Twitterで話題になった農薬を洗い落とせる水について

以前、Twitterで問題になっていたベジシャワーという商品について、いろいろ思うことがあったのでTwitterで連続tweetしました。で、埋もれてしまうのもアレなのでまとめてエントリーを起こしたのです。 さて、きっかけになったtweetは次のものです。https://…

厄介な植物のウイルス病 ?アザミウマが媒介するトスポウイルスとは?

植物病害のうち、糸状菌や細菌の場合、胞子の飛散や土壌、水媒伝染などにより病気が拡散しますが、ウイルスは基本的には生体内でしか増殖、生存できませんのでそういった伝染形式はほとんどありません。直接の接触や剪定鋏での作業などによる汁液感染、害虫…

ニンニク(暖地系)分球の条件とは ?スポンジ球って何だ?

ずいぶん久しぶりになってしまいましたが、これからまたちょくちょく書いていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。今回から、ちょっと文体を変えていきたいと思います。 関係ないですが、某コーヒー本の書評を書きたいとずっと思っていますが、…

窒素固定菌(根粒菌)とはなにか

さて、先日Twitterで根粒菌の話題が出ていたので、それに絡めて植物栄養で窒素の話、特に根粒菌というか窒素固定菌について取り上げてみよう。 窒素関連の話題については「有機物施用とアミノ酸吸収について」や「有機栽培と大規模農業経営は対立する概念? …

IPM(総合的病害虫管理)ってなんだろう

農業生産の現場にいると、IPMという言葉を最近よく目にするようになった。これはIntegrated Pest Managementの略で、日本語では総合的病害虫管理と訳されることが多い。これは農薬だけに頼らず、利用可能なすべての防除技術をそれぞれ矛盾することなく組み合…

「醤油本」

というタイトルのムックが発売されているということをTwitterで相互フォローの方から教えていただいた。それに、直接の知り合いではないが結構身近な人が著者に名を連ねているということもあり、仕事にも関わることなので購入してみることにした。 まずは醤…

齋藤訓之著「有機野菜はウソをつく」について

Food Watch Japanを運営している齋藤訓之さんが「有機野菜はウソをつく」という非常に刺激的な表題の著書を出された。この表題から想像される内容を自分なりに予想しながら読み進めたが、中身は表題ほど攻撃的ではなく、極めて常識的である。それでも、この…

有機栽培と大規模農業経営は対立する概念? ?有機栽培での窒素供給について?

さて、こないだ某所で有機栽培における窒素供給の観点から、有機栽培は大規模経営には向かないのか、といった話が持ち上がっていたので、そのあたりどういう風にまとまるかは自分でも読めないが、取り上げてみたい。なお、有機栽培の定義からすると農薬の使…

野菜解説シリーズ ?ネギ科ネギ属のお話?

久しぶりの更新です(笑)。Twitterで連ツイしたものの再掲です。トゥギャッターにもまとめてもらったりまとめたりしたので、重複していますが、こちらのみ読んでくださっている方もおられるので、再掲します。基本的にtweetそのままの内容です、手抜きですい…