アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

平成の農業を振り返ってみて

ずいぶん更新頻度が落ちてしまっていますが、とりあえず生きていることの証明のために何か書かねば、ということでつらつらと思いつくままに。

 

昨年一年間を通して、またその少し前からの感覚として、やはり温暖化の影響を感じざるを得ません。ここのところ暖冬傾向が続いていることもありますが、それより夏季の暑さが苛烈を極めてきているというのがより実感されるのです。

 

とりあえず今回はデータを示すことなく実感だけのお話しをしますが、特に野菜の露地栽培はその体系や考え方を転換せねばならない時期に来ていると思われるのです。

 

まず夏の育苗が難しくなってきています。瀬戸内地域では秋冬野菜の定植は9~10月に行われるため、育苗は7~9月ということになります。梅雨が明ければいきなり連日35℃オーバーの日が続き、雨よけ育苗施設ではなおさら気温が上がりがちです。とてもではありませんが、秋冬野菜の育苗・生育適温とは言えません。このため、品目によっては根の活性が落ち、適切に施肥を行っているのに要素欠乏の症状が出る、という事例も散見されます。

 

また、昨年は比較的ましだったんですが、ここ数年は毎年秋冬野菜の定植及びそのほ場準備の時期に定期的に強い雨が降り、定植がずれこんだり苗がダメになってしまったりすることも多々ありました。一昨年などは通常9月下旬~10月上旬に行われるニンニクの定植が進まず、11月にずれ込んでしまった生産者も多数おられました。ブロッコリーなどでは、せっかく計画的な植付で作業の分散を図っているのに収穫が一度に集中してしまい、適期収穫ができずに品質や収量が確保できないこともありました。

 

西日本の産地では一部地域で生産が伸びているアスパラガスですが、全国的には減少傾向にあります。特に露地での栽培が壊滅的です。全体的な気温の上昇と短期集中型の降雨により、梅雨~夏季にかけて発生が多い茎枯病という病気がより多発するようになりました。この病気はアスパラガスにとっては致命的で、めったなことでは株が枯れてなくなってしまうことのないアスパラガスを全滅させてしまうこともあります。想像も入っていますが、東~北日本で露地栽培の面積が減ってきているのはこの病気を防ぐのが難しくなってきているためだと個人的には思っています。

 

ということを考えれば、技術的な高温対策で従来品目の課題を解決していくと同時に現在の気候状況に対応した品目や作型への切り替えも考えていかねばならない時期に来ているのかもしれません。自分に残された時間はそれほどありませんが(人生はまだまだ残っていますよ)、少しでもそのあたりの課題を解決に近づけていけたらな、と思っています。

 

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写真は、こたつから半身を出して人間のような寝姿のミルさん。