アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

農家って自家用栽培には農薬を使わないの? いいえ、使います

油断していたら、年始から熱を出してしまったがんちゃんです。

 

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)
よく言われる「農家は自家消費用の農作物には農薬を使わない」と農薬が危険であることの根拠であるように語られる言説ですが、「使わない」という部分については事実である場合もありますが、普通に使っている農家さんも多数いらっしゃいます。

 

どうしてこういう持って回った言い回しをするのか、というと自家用栽培には農薬を使わない農家さんも、ほとんどの場合農薬が危険だから使わないのではなく、儲けに繋がらない小面積のためにわざわざ動噴などを引っ張り出して、単価の高い貴重な農薬を消費するのはコストからも労力からもバカらしいからです。

 

それでも農薬による防除をする場合は、それらがきちんと収穫できることや、自家用栽培の農作物で繁殖した虫や病気が、自分の経営品目に移って被害が出る可能性を下げることを農薬のリスクより優先しているからですね。というか農薬のリスクなどほとんど気にしていない方が多いと思います。

 

そのほかに、農協は使うべき農薬を指定して、それらを使っていないと出荷を認めない、儲けのために農薬を買わせないといけないからだと言う人もいます。もちろん農協は利益を上げなければいけませんから、農薬を農協で買ってくれればうれしいですが、そんな縛りはありません。農協指定の農薬でなかろうと、農薬を使っていなかろうと、農作物の形や大きさ、傷の有無など出来上がったものが出荷規格を満たしてさえいれば、必ず集荷してくれます。

 

使っている農薬がその作物に使用登録がなされていること、希釈倍率や収穫前日数など使い方がその登録内容に合致していることは農薬の使用履歴で確認しますが、それさえクリアすれば農薬に関しては何の問題もありません。全く使用していなくてももちろんオッケーです。

 

むしろ、登録されている希釈倍率より高い濃度で使用したり、使用可能な収穫前日数より短い日数で使用したり(7日前までとされている農薬を3日前に使用したなど)すればその時点で出荷不可になります。農作物への農薬の残留があるかどうかは関係ありません。

 

つまり、農協の決めた農薬の使用基準を守るのではなく、農林水産省に登録された農薬の使用基準を守っていれば出荷には何の問題もないわけです。それは、農協以外の市場出荷でも同じことです。

 

それとは別に、出荷物の抜き取り検査で農薬の残留検査を行うことがあります。農家さんが使用基準を勘違いすることもありますし(この場合は農薬取締法的にも問題です)、ごくまれにではありますが、使用基準を守っていても残留基準値を超えることがあります。このようなものはたとえ農薬取締法では問題がなくても、食品衛生法で規制を受けますので、やはり出荷停止になります。厳しい話ですが、仕方ありません。

 

以上、農家の自家用栽培での農薬の使用の話から、農協が農薬使用について農家に対して強制しているのかというところまで話が広がってしまいましたが、そのあたりの現状については、よくお判りいただけたかな?と思います。

 

ちなみに、私は農協職員ではありませんが、農家さんに技術的に関わる仕事をしており、多くの農家さんと接触していますが、その中で得た感触での話です。データをそろえて統計を取ったわけではありませんが、まず間違っていないと思います。