アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

塩害対策その2(短め)

以前、一度塩害対策のエントリーを書いた。そのときは、以前に自分が高潮対策で作成した資料を基に一般向けに解説したものとした。今回は少し踏み込んで、除塩対策となる植物について考察してみたい。 さて、農地も大きな被害を受けた宮城県仙台市及び名取市で、綿花の作付けによる除塩の試みが始まっている。農地の回復と、普通に元の作物を作付けできるようになるまで少しでも現金収入を上げられるようにしたいと言う取組である。綿花は非常に塩分に強く、土壌に対して0.4?0.5%の濃度でも育つと言われている。 また、塩害を受けたほ場で高糖度トマトを作ろうと言う動きもある。高糖度トマトは根域制限や生育を見ながらの少量潅水、やや高濃度の養液栽培などで栽培されるが、水分ストレスを与える目的では薄い塩水(希釈した海水)を使うやり方もある。これを逆手にとって塩分を含む土壌でトマトを作り、「塩トマト」として付加価値まで付けようと言うアイディアである。 他にも千葉県では海水を散布してネギの食味を向上させるという取組も行われている。こうして海水を散布して栽培されたネギは、ミネラル含量が多く、甘みもあって食味がいいといわれている。 砂糖の原料になる甜菜もナトリウムの吸収量が多く、ナトリウムの施用が生育を促進すると言われるため、塩害農地のナトリウム除去に役立つかもしれない。作付け品目を変えるというのは栽培技術もさることながら流通や気候など複雑な問題が絡んでくるので「そんないいものがあるんだったらそちらに変えましょう」という風に簡単には行かないが、農地の回復を待ちながら栽培でき、少しでも換金できるものについては、行政やJAも積極的に支援すべきだろう。 以上のように、塩害土壌を逆手に取れる品目はいくつか存在する。ただし、それぞれに塩類濃度の適応範囲が違うため、それぞれの土壌調査は必須である。それと、先ほども述べたように気候や塩類以外の土質に対する適応性も考慮する必要がある。こういうアイディアがあるからとすぐどうこうできるものではないが、少しでも被災農地の助けになればと思っている。