アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

種子法廃止に伴う種苗法の付帯決議について

夫婦での北海道旅行が楽しすぎて、こっちの更新が滞っていたがんちゃんです。

 

前回、種子法廃止法案の付帯決議につてお話しさせていただきました。

実は改正種苗法の施行時にも、種子法廃止後も都道府県に対し適切な措置を行えるよう国会で付帯決議をしているのです。これにより、都道府県も独自に種子法に代わる政策をやりやすくなっているという面は確実にあります。

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この付帯決議は、種子法廃止の補完のみを目的としたものではありませんが、種子法の代替措置となりうる項目が多数含まれています。

 

 

それでは、その付帯決議の中から種子法に関わると思われる部分を抜き出してみましょう(以下、付帯決議は太字で表示)。

 

二 稲、麦類及び大豆の種苗については、農業者が円滑に入手し利用できることが我が国の食料安全保障上重要であることに鑑み、都道府県と連携してその安定供給を確保するものとし、各都道府県が地域の実情に応じてその果たすべき役割を主体的に判断し、品種の開発、種子の生産・供給体制が整備されるよう、適切な助言を行うこと。

三 各都道府県が、稲、麦類及び大豆の種子の原種ほ及び原原種ほの設置等を通じて種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、これを民間事業者に提供するという役割も担いつつ、都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、必要な措置を講じることができるよう、環境整備を図ること。

 

この二つは、具体的に何をするのかは書かれていませんが、国が手を貸すよ、ということをははっきり言っています。

 

五 種苗法に基づき都道府県が行う稲、麦類及び大豆の種子に関する業務に要する経費については、従前と同様に地方交付税措置を講じること

 

これからも以前と同じく、優良種子の確保に関する予算については国がお金を出すよ、と言っているわけです。

 

八 公的試験研究機関が民間事業者に種苗の生産に関する知見を提供する場合においては、我が国の貴重な知的財産である技術や品種の海外や外国企業への流出を防止するため、適切な契約を締結する等十分留意するよう指導すること。

 

農業競争力強化支援法で農研機構や都道府県の育種に関する知見を、民間企業に提供することがうたわれており、これを問題視する人もおられますが、この付帯決議で少なくとも海外への流出は防ごうとしていることが分かりますね。

 

十 新品種の開発は、利用者である農業者の所得や生産性の向上、地域農業の振興につながるべきものであることに鑑み、我が国において優良な植物新品種が持続的に育成される環境を整備するため、公的試験研究機関による品種開発及び在来品種の収集・保全を促進すること。また、その着実な実施を確保するため、公的試験研究機関に対し十分な財政支援を行うこと。

 

五とよく似ていますが、新品種開発等に関しては、従来通り国が十分に支援しますよと言っているわけです。

 

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

ようするに、国は種子法が廃止されても水稲、麦、大豆その他の品目も含めて都道府県の支援は続けますよ、と種苗法の付帯決議でも言っているわけです。もちろん付帯決議には法的拘束力はありませんが、丸っと無視することもできません。また、これだけがその要因でもありませんが、とりあえず現時点では、前回もあげたように各都道府県は種子法廃止前の状況とほぼ同じ措置を続けていますし、自治体の存在意義を考えれば、このまま当分はこの体制が続いていくものと考えています。