アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

ゴジラ―1.0 ネタバレなしレビュー

明日のツーリングが楽しみながんちゃんです。

 

というわけで、初日の一発目の上映で観てきたので、簡単なレビューを。数日前、Twitterに書いたもののまとめです。

 

youtu.be

 

全編ダレるところがほぼなく、最後まで緊張感を持って観られたし、放射熱線についてもそう来るかと上手くやった印象。最後は、ちょっと都合良すぎと思わなくもないが、それがないと重い気持ちを引きずっちゃうし、そこはネトフリで配信してるガメラリバースよりも良かった。

 

ともあれ、作品としてはかなり良い出来だったと思う。自分は、怪獣映画には甘い採点をしちゃうので、自分のレビューはある程度さっ引いて見て欲しいけど、それでもほとんどの人が満足できる作品になってることは保証したい。ガメラまた実写でやるなら、相当頑張らんと、ハードル上がっちゃったぞ。

 

シンゴジとは違う意味で、正統派怪獣映画が帰ってきたぞ!と言う感じ。ガメラリバースも昭和の怪獣映画を令和に翻訳した感じですごく良かったが、ストーリーの完成度ではゴジラ-1.0の方が上だった。最後のアレ、ガメラもあんな感じにしていたら良かったのに、と悔やまれる。

 

というわけで、怪獣映画が今後も作られ続けるためにもみんなゴジラ-1.0観に行ってください。万が一、ガメラも実写化したら、そっちもみんなで行きましょう!💪(`・ω・´💪)

 

そうそう、一つ忘れていたけど、平成ガメラへのオマージュもあった。予告に出てくるので、わかる人はわかるよね。ちょっと嬉しいポイントでした。

種子法廃止に伴う種苗法の付帯決議について

夫婦での北海道旅行が楽しすぎて、こっちの更新が滞っていたがんちゃんです。

 

前回、種子法廃止法案の付帯決議につてお話しさせていただきました。

実は改正種苗法の施行時にも、種子法廃止後も都道府県に対し適切な措置を行えるよう国会で付帯決議をしているのです。これにより、都道府県も独自に種子法に代わる政策をやりやすくなっているという面は確実にあります。

www.shugiin.go.jp



この付帯決議は、種子法廃止の補完のみを目的としたものではありませんが、種子法の代替措置となりうる項目が多数含まれています。

 

 

それでは、その付帯決議の中から種子法に関わると思われる部分を抜き出してみましょう(以下、付帯決議は太字で表示)。

 

二 稲、麦類及び大豆の種苗については、農業者が円滑に入手し利用できることが我が国の食料安全保障上重要であることに鑑み、都道府県と連携してその安定供給を確保するものとし、各都道府県が地域の実情に応じてその果たすべき役割を主体的に判断し、品種の開発、種子の生産・供給体制が整備されるよう、適切な助言を行うこと。

三 各都道府県が、稲、麦類及び大豆の種子の原種ほ及び原原種ほの設置等を通じて種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、これを民間事業者に提供するという役割も担いつつ、都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、必要な措置を講じることができるよう、環境整備を図ること。

 

この二つは、具体的に何をするのかは書かれていませんが、国が手を貸すよ、ということをははっきり言っています。

 

五 種苗法に基づき都道府県が行う稲、麦類及び大豆の種子に関する業務に要する経費については、従前と同様に地方交付税措置を講じること

 

これからも以前と同じく、優良種子の確保に関する予算については国がお金を出すよ、と言っているわけです。

 

八 公的試験研究機関が民間事業者に種苗の生産に関する知見を提供する場合においては、我が国の貴重な知的財産である技術や品種の海外や外国企業への流出を防止するため、適切な契約を締結する等十分留意するよう指導すること。

 

農業競争力強化支援法で農研機構や都道府県の育種に関する知見を、民間企業に提供することがうたわれており、これを問題視する人もおられますが、この付帯決議で少なくとも海外への流出は防ごうとしていることが分かりますね。

 

十 新品種の開発は、利用者である農業者の所得や生産性の向上、地域農業の振興につながるべきものであることに鑑み、我が国において優良な植物新品種が持続的に育成される環境を整備するため、公的試験研究機関による品種開発及び在来品種の収集・保全を促進すること。また、その着実な実施を確保するため、公的試験研究機関に対し十分な財政支援を行うこと。

 

五とよく似ていますが、新品種開発等に関しては、従来通り国が十分に支援しますよと言っているわけです。

 

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

ようするに、国は種子法が廃止されても水稲、麦、大豆その他の品目も含めて都道府県の支援は続けますよ、と種苗法の付帯決議でも言っているわけです。もちろん付帯決議には法的拘束力はありませんが、丸っと無視することもできません。また、これだけがその要因でもありませんが、とりあえず現時点では、前回もあげたように各都道府県は種子法廃止前の状況とほぼ同じ措置を続けていますし、自治体の存在意義を考えれば、このまま当分はこの体制が続いていくものと考えています。

種子法を廃止する法律案への付帯決議について

また家族(猫)が増えましたが、たまたままた黒猫になってしまったがんちゃんです。

新しい家族のポコさんと先住猫1号のコピさん、2号のミルさんです。

 

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主要農作物種子法、いわゆる種子法の廃止は様々な議論を呼び起こしました。種子法は、主要農作物(水稲、麦類、大豆など)の優良な種子の確保を各都道府県に義務付けるものですが、それによって国内でのそれらの種子生産が滞り、多国籍企業に日本の種子が支配されるのではとの懸念を表明される方が多数いらっしゃいました。

elaws.e-gov.go.jp

 

しかし、この法律は短いのでぜひ全文を読んでいただきたいのですが、隅から隅まで読んでも「国が後ろ盾になってやるから、都道府県は原原種及び原種の生産をきちんとしなさいよ、種子の確保についても責任をもって監督しなさいよ」と法的根拠を以て言っているにすぎず、メーカー等の参入を禁じているわけではありません。なので、多国籍企業が日本の種子を牛耳ろうと企んだとしたら、その際の防波堤になるかはきわめて頼りないものと言わざるを得ません。

 

可能性があるとすれば、種子法がある限り各都道府県が安価で品質のいい種苗の生産を行うからメーカー等のはいりこむ余地がない、という考え方くらいでしょうか。ちょっと根拠が弱そうですが…。加えて、種子法が廃止されたからと言って各都道府県がこれ幸いとそれぞれ優良種子の生産を取りやめるかというとそんなことは起こっていません。確認出来る限り令和5年度5月現在で33の自治体が独自条例を制定したり対応できるようなものにしていますし、それ以外でも東京都を除いて何らかの実施要項や要領などを設定して、品種開発や種子生産の事業を継続しています。

 

種子法が廃止になったのは平成30年4月です。種子法は、それを廃止する法律が同年4月1日に施行されることによって廃止されたわけです。その時、廃止法案に対する付帯決議がなされました。付帯決議とは、参議院のHPによると以下のように書かれています。

 

~引用開始~

法律案が可決された後、その法律案に対して附帯決議が付されることがあります。附帯決議とは、政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したものですが、実際には条文を修正するには至らなかったものの、これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付けるといった態様のものもみられます。附帯決議には、政治的効果があるのみで、法的効力はありません。 こうして委員会で可決された法律案は、本会議に上程され同一会期に両院で可決されると、政府による公布手続を経て法律となります。

~引用終了~

 

それを踏まえて、種子法廃止法案の付帯決議(リンク先はpdf)がどのようなものだったか見ていきましょう。全文を引用します。

 

○附帯決議(平成二九年四月一三日)
主要農作物種子法は、昭和二十七年に制定されて以降、都道府県に原種・原原種の生
産、奨励品種指定のための検査等を義務付けることにより、我が国の基本的作物である
主要農作物(稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆)の種子の国内自給の確保及び食料安
全保障に多大な貢献をしてきたところである。
よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 将来にわたって主要農作物の優良な品質の種子の流通を確保するため、種苗法に基
づき、主要農作物の種子の生産等について適切な基準を定め、運用すること。
二 主要農作物種子法の廃止に伴って都道府県の取組が後退することのないよう、都道
府県がこれまでの体制を生かして主要農作物の種子の生産及び普及に取り組むに当た
っては、その財政需要について、引き続き地方交付税措置を確保し、都道府県の財政
部局も含めた周知を徹底するよう努めること。
三 主要農作物の種子について、民間事業者が参入しやすい環境が整備されるよう、民
間事業者と都道府県等との連携を推進するとともに、主要農作物種子が、引き続き国
外に流出することなく適正な価格で国内で生産されるよう努めること。
四 消費者の多様な嗜好性、生産地の生産環境に対応した多様な種子の生産を確保する
こと。特に、長期的な観点から、消費者の利益、生産者の持続可能な経営を維持する
ため、特定の事業者による種子の独占によって弊害が生じることのないよう努めるこ
と。
右決議する。

 

法的拘束力がないため、この付帯決議が確実に履行されればという条件付きではありますが一応国は従来通り優良種苗の確保について、財政面も含めて都道府県を支援していく方針であることはわかります。


個人的には、特に都道府県は各県民等の声が直接届きやすく、国内情勢がよほど大きく変わらない限りはその求めに応じて現在の種苗生産体制を維持していくだろう、と現場を見ている限りそう思います。また、種子法廃止から5年経った今でも独自条例や要綱要領の制定など実務上はほとんど何も変わっていないと思いますし、実感として今後もこの体制が当分続いていくと思われます。

 

次回は、今回の付帯決議に続いて、改正種苗法施行時にも付帯決議が行われたので、そちらについてもお話ししてみたいと思います。

あきたこまちR 放射線育種が利用されていますが、それが何か?

「農家ば(を)かっこいい仕事にするったい」の写真[モデル:五十嵐夫妻]

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

台風の低気圧が少々辛いがんちゃんです。

 

秋田県は、あきたこまちをベースとしてカドミウムの吸収を抑制した水稲品種「あきたこまちR」を開発しました。これは、国が開発したカドミウム低吸収性品種のコシヒカリ環1号にあきたこまちを7回戻し交雑することでコシヒカリ環1号のカドミウム吸収抑制に関する遺伝子を残しながら、他の性質はほぼあきたこまちとしたものです。

www.pref.akita.lg.jp

 

戻し交配とは、あきたこまちコシヒカリ環1号を掛け合わせた雑種第1代にさらにあきたこまちを交配するという方法で、そうしてできた子供(雑種第2代)は計算上4分の3があきたこまちの遺伝子ということになります。さらにその第2代にあきたこまちを掛け合わせ…とできた雑種にあきたこまちをさらに交配する、という作業を7代に渡って行うわけですね。

 

第7代目になると片親であったコシヒカリ環1号の遺伝子は2の7乗(128)分の1しか残っておらず、遺伝的にはほとんどあきたこまちになっていると言えます。もちろん、単純に掛け合わせていっただけではコシヒカリ環1号から引き継ぐべき目的とする形質(この場合はカドミウム低吸収性)が残る可能性も128分の1ということになります (本当はもっと複雑で、遺伝子があっても発現するかどうかも不明ですが)から、交配してできた雑種を1代ごとに目的とする性質があるか詳細な調査を行い、合格となったものだけ次代の親にできるわけです。

 

この、戻し交配という育種技術は、伝統的に行われてきた技術で、元の品種の性質を残しつつ、新たな形質を一部だけ導入したい場合には農業関係者では常識ともいえる技術なのです。

 

この中で、一部の運動家?が問題視しているのは片方の育種親となったコシヒカリ環1号が放射線育種技術を用いて作られた品種であるということのようです。放射線育種技術とは、放射線で遺伝子を傷つけ、その遺伝子が修復される過程で起こる複製のミスなどで変異が起き、その変異が必要とする形質であればそれを品種として使うというものです。

 

ここで、放射線(中でもイオンビーム)を使うというのが問題視されているようですが、そもそも突然変異というのは自然界でもたびたび起きており、その中でも自然放射線による遺伝子損傷は主要な変異の一つです。それは、イオンビームの貫通力がいかに強かろうと同じことです。

 

果樹の分野では、枝変わりという自然の変異を利用した育種は頻繁に行われています。香川県のオリジナル品種ミカンの小原紅早生などは、宮川早生というミカンから一部の枝だけ特別に赤い実がなっていたのを農家さんが発見して、その枝を切り取って挿し木や接ぎ木で殖やし、農業試験場で詳細な調査を行った上で固定品種としたものですが、これも紫外線や自然放射線による変異の可能性が高いでしょう。そうでなければ、一部の枝だけ全く違った性質になるとは思えません。

 

そういう自然の変異と、人工的に放射線を当てて変異を起こさせたものとどこが違うのでしょうか?どちらも偶然起きた変異を人為的に選抜しただけです。イオンビームを使った場合、ターゲットが絞りやすいという違いはありますが。ともかく、自然条件下でのほとんどの変異は、人間に気づかれることなく淘汰されて消えていったり、形質の変化に耐えられず次世代を残せなかったりしている事でしょう。

 

また、放射線による変異は何がおきているかわからないので、未知の毒性など良くない性質が生じているかも、との心配もあるようですが、品種登録をする段階でその辺は詳細に調査がされています。人間が頭で考えて調査出来る事など限界があるという主張もあり、それ自体はその通りですが、自然の突然変異で淘汰されてきた野生の植物などそういう調査すらされてない場合が多いですから、それこそ何があるか分かりません。また、遺伝子の狙った部分をある程度絞り込むことができるイオンビームに比べて、自然放射線にも含まれるガンマ線での変異では、遺伝子のあちこちがランダムに切られるため、それこそどんな変異が起こるかわかりません。

 

怪獣のイラスト

また、(これを主張する人はそれほどいないでしょうが)笑い話にもなりませんが、植物が放射能を持つことを心配する声もあったようです。その植物が放射線を出せるようになるほどの放射線量を浴びせ続けたら、ふつうは枯れてしまいます。生物が放射能(あえてこう言います)を浴びたからと言って放射線を出せるようになるなんて、ゴジラやないねんから(呆れ)

 

ほかにも、秋田県が全面的にあきたこまちRだけにして従来のあきたこまちは種子の提供をやめるという話が流れてきていますが、仮にそうだとしても県が品質を保証して提供してくれなくなるだけで入手できなくなるわけではありません。また、あきたこまちはもう登録が切れた一般品種ですから可能であれば自家採種を行っても法的にも何の問題もありませんし、あきたこまちの栽培そのものが禁止されるわけでもありません。

 

秋田県は種子法廃止に伴う独自の種子条例を制定していて、それに基づいて米麦、大豆などの原原種や原種の生産をしていると思います。県では、精密な管理によって遺伝子の混入を防ぎ、病害虫の心配もない原種を生産しているわけです。この原種が生産者に渡される種子の親になるわけです。それで、あきたこまちに関してはそれをやめようという可能性はあるかと思って調べてみたら、令和5年1月現在ではあきたこまちは奨励品種に入っています。ですから、種子の提供がなくなるということはないのでは?なくなるとしても6年度以降の話?

 

それから、秋田県あきたこまちRの流通についてどのような措置を取ろうとしているのか細かいところまではわかりませんが、他の品種の作付けを禁止することはできません。また、地元JAの対応もどうなるか分かりませんが、全く出荷できなくなるということはないと思います。ただ、カントリーエレベーターでの出荷の場合は、品種ごとに分けて乾燥から調整、籾摺りを行うのは難しく、あきたこまちRにあきたこまちが混入することを防ぐため、制限がかかる可能性はあります。なので、自分で籾摺りをしなければならない場合があるかもしれません。しかし、出荷形態をきちんと守っていれば玄米ですら出荷できないということはほとんど考えられないでしょう。

www.maff.go.jp

 

というわけで、育種手法や品種特性の面からも、種苗流通の面からも、あきたこまちRしか作れなくなり、食品としても危険かもしれないという言説はどちらも間違っていると言えます。

閾値についての個人的な考え方 何かに例えてみれば

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

猛暑の中での外仕事で疲れは溜まってるのに痩せないがんちゃんです。

 

もう何十年も前から農薬で、ここ10年程は放射線量で人体への影響がある量というものがしきりに議論になっています。危険をあおる側は影響量や毒性量には閾値がなく、どんなに少量でも人体に悪影響があると言いがちです。極端な例では、たとえ一つの粒子が飛んだだけのごく弱い放射線でも(そんなのがありうるのかは私にはわかりませんが)遺伝子を傷つけ、がんを引き起こす可能性があるのではなどといった人もいました。

 

研究・科学実験のイラスト(女性)

しかし、残留農薬の基準値を決める大元になるADI(一日摂取許容量)(というよりnoael(無毒性量)?)のような数値が存在し、現場にいての実感とも矛盾しないことを考えると、やはり人体に全く影響のない量というのはほとんどの物質や電磁波、放射線にはある、と考える方が自然だと思います。

www.jcpa.or.jp

 

さて、その閾値というものの存在をイメージとして一般の方にも理解しやすい説明はないものかと考えてみました。

 

「森の中に佇む大岩」の写真フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

まず、ここに重量10tの岩が落ちているとします。100人で同時に1分押せば何とかぎりぎり1m動かすことができると仮定しましょう(地面の状況や岩の形状によってはもっと少ない人数で動くかもしれませんし、もっとたくさんの人でも動かないかもしれませんが、ここではたまたまそういう条件だったとさせてください)。

 

さて、その岩を1人で押した場合、10分押して10㎝動くでしょうか?あるいは100分で1m動かせるでしょうか?おそらく1㎜も動きませんよね。びくともしないと思います。そこから1人ずつ増やしていけば、どこかで岩は動き出すでしょう。50人かもしれないし、80人かもしれない。100人がホントにぎりぎりだったかもしれない。100人がぎりぎりだったとしたら、それが閾値ということになるのではないでしょうか。

 

つまり、100人未満では全く岩は動かないのだとしたら、毎日毎日99人集まって押したところでどうにもなりません。農薬などにおけるADI(というか閾値)はこれに相当するのだと思います。

 

ただ、毎日集まる人が別の人だった場合は1日休みを作れば198人集めることも可能ですから、岩をどかすことだってできるかもしれません。意地悪な人は、人はいろんな農作物を食べているわけですから、たまたまそれぞれに同じ農薬が残っていて、岩を動かす話に例えた場合、1日で100人以上集まってしまうことがあるかもしれないじゃないか?というかもしれません。しかし、ADIを基に作られる残留基準値はそれらも考慮し、同じ農薬が残留したいろいろな農作物を一度に食べてもADIの8割を超えないように考慮して設定されています。つまり、たまたまそういうことがあっても、岩を動かす人員は80人しか集まらないように制限されているわけです。

 

さて、イメージ的には分かりやすくなったかと思いますが(自信はない)、このたとえ話はあくまで個人の考えなので、リスク管理の専門家がこの記事に対してコメントをくださると助かりますが、なかなか難しいでしょうね(笑)

ホタテパウダーは農薬を落とす? そもそも市販農作物には農薬はほぼ残留していないが

「南国の海でも更新作業を怠らない意識の高いスーツ姿のブロガー」の写真[モデル:大川竜弥]

フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)

1年以上放置していて、ようやく更新したがんちゃんです。

 

最近、SNSで現役のお医者さんが日本の農作物は農薬が多量に残留していて危険である、ホタテパウダーを水に溶いて洗浄すれば農薬が落とせて安全になる旨を発信しているようです。それについて検証し、効果があるとは思えないとした記事日本農業新聞に取り上げられ、専門家の監修も受けた内容になっており、一定の信頼性があると思われました。しかし、ホタテパウダーの化学的性質などについては、新聞記事という性格上あまり掘り下げられておらず、そのあたりについてもう少し知りたいと調べてみましたのでブログにまとめてみました。

news.yahoo.co.jp

 

これについては、以前にも似たような事例があり、その時にもホタテ粉末で農薬を落とすという商品について取り上げました。しかし、その記事では他の例を挙げて効果があるとはとても思えないと結論付けましたが、ちょっと内容が浅すぎ、今読み返してみるとこれは書き直す必要があるなと思ったわけです。

agriscientist.hatenablog.jp

 

施肥のイラスト

さて、ホタテに限らず貝殻の主成分はほとんど炭酸カルシウムです。塩抜きをした貝殻を粉砕したものはほぼ炭酸カルシウムの粉末と考えてよく、農業分野では主に牡蠣殻を粉砕したものが酸性の矯正用土壌改良資材として販売されています。

 

炭酸カルシウムは中性の水(というか真水)にはほとんど溶けません。酸性の水には少しずつ溶けますので、酸性の土壌をゆっくりと改善するには最適なわけです。一般に土壌改良資材として売られている苦土石灰も石灰分は炭酸カルシウムが使われています。

 

ですから、普通の水道水にホタテ貝殻をただ粉砕したものを入れてもほとんど意味はありません。なので、「農薬を落とす」と宣伝されているホタテパウダーは1000℃前後で焼成して粉末化しており、これによって炭酸カルシウムは酸化カルシウムに変化しています。酸化カルシウムは水にも少し溶けるため、この粉末を水に溶いたものは強アルカリとなりますので、これが農薬を溶かし出すということなのでしょうか?

 

ホタテ焼成粉末の水溶液は強力な殺菌力があり、食品衛生上の利用について神奈川工科大学 応用バイオ科学部 栄養生命科学科の澤井教授が研究されており、次亜塩素酸と同程度の殺菌力があり、野菜等での殺菌処理でも野菜類の品質低下は大きな問題にはならないと結論付けられています。
ただ、ホタテ焼成粉末の殺菌力は、アルカリに依存するのではなく、活性酸素が関与しているのではないかという点には注意が必要でしょう。

なので、ホタテパウダーで野菜類を処理することは、食品衛生上は意味のあることと言えます。もちろん、強アルカリの酸化カルシウム溶液は物質としてはたんぱく質を溶かす劇物なので、取り扱いには注意が必要です。なにか役に立ちそうな使用マニュアルがないか検索してみましたが、怪しいサイトが沢山引っかかってきましたので、諦めました…。

 

さて、冒頭で紹介した農業新聞の記事で、ホタテパウダーによって溶け出してきたものはなんだったのでしょうか。日本植物生理学会の植物Q&Aというサイトによると、「トマトのもっとも外側の皮の部分は外果皮と呼ばれ、脂質を主成分とするクチクラでできています。クチクラの最外層はワックスで、隣接した内側にはクチン(OH基を持つ脂肪酸が重合してできた高分子)が主体で、ワックス、ヘミセルロース(植物に含まれるセルロースを除く水に不溶の多糖類)、ペクチン質も含まれています。」とあります。このワックス部分が溶け出してきたものと考えるのが自然ではないでしょうか。

jspp.org

 

以前のエントリーでも書いたように、たとえホタテパウダーの効果が本物であったとしても、農薬の成分が目に見えるほど溶け出してきたら大変です。実際、農薬の残留分析の現場も見てきていますが(自分は土壌肥料の分析技術者だったので、すぐ近くでやっていたそれらの作業を時々見ていました)、農薬の成分ごとに溶解可能な溶媒が違うため、どの農薬がどのくらい残留しているのか、などある程度推定しないと分析そのものが成り立ちません。また、通常ppm単位以下での残留のため、溶出液そのままでは高速液体クロマトグラフィー等でも分析可能な下限値以下になり、まず特殊な方法での濃縮が必要になる場合もあります。つまり、通常そういうオーダーでの残留農薬が、強アルカリで目に見えるほど溶け出してくるはずはないのです。

 

プールの水を飲む人のイラスト

たとえるなら、プールの横でお弁当を食べていて、お弁当についてきた小さなしょうゆを落としてしまい、そのせいでプールがうどんの出汁みたいな色になったというようなものです。そのくらいで目に見えるほどプールの色は変わりませんね。それに、プールの水がしょうゆ味になったと気づく人もいないでしょう。

 

また、溶液の着色については、トマトのリコピンなども考えられますが、トマトの茎や葉などの表面に生えている毛から分泌されるアクの可能性が高いのではないかと思います。このアクは、トマト果実表面からの分泌はそれほど多くはないと思いますが、ヘタの部分や果実周辺の茎や葉から付着したものと思われます。

 

以上のことから、ホタテパウダー溶液で溶出したものおよび浮き上がってきたものは農薬である可能性は極めて低いと言えるでしょう。もしもですが、残留があった場合は、表層がはがれて浮き上がってきたものですから、農薬が含まれている可能性は否定できません。ですが、農薬が含まれていなくても少なくとも見た目には同様の結果になっているようですので、何かがホタテパウダーで溶け出してきたとしても、それが農薬残留の証拠という言説は間違っていると言えます。

 

しかし、現状流通している農作物に問題になるほどの農薬が残留していることはまずありえませんので、ホタテパウダーで農薬除去、というのはいずれにしても全く意味がないと結論付けられると思います。

新しいガジェット導入 ASUS Chromebook C425TA レビュー

最近更新が滞っていますが、職場が変わって随分しんどい思いをしているので、農業ネタはしばらくお待ちいただきたいがんちゃんです。

 

さて、最近になってネットをちょっとでも快適にしたいのと、AndroidアプリをPCで使ってみたいのとでChromebookなるものを導入してみました。ASUSのC425TAです。

www.asus.com

 

自分にとってはノートパソコンとタブレットの中間みたいなもの、という認識です。アンドロイドアプリが動き、スマホではやりにくい諸々ができること、キーボードが付いているので、長文を打つには楽なことなどが購入のきっかけです。あと、謳い文句としてはセキュリティがしっかりしていて、動作が軽いというのもありますので、それも期待してのことでした。

ネットなど動作は宣伝文句の通り速くて快適。ただ、スペックの割に安かったことに釣られて、C425TAを選んだんですが、英文キーボードのモデルでした。まぁ、ローマ字入力なのであまり問題ないかなと思っていたら、かなりキー配置に癖があって、ちょっと苦戦してます。キートップの表記と()の位置がずれてたりキートップに+(実際にはshift+;)の表記がなく、どうやって打つんだとしばらく悩まされたり、どこにも_(アンダーバー)が割り当てられておらず、日本語入力から変換で出すしかできません。いろんな補助入力に結構アンダーバーを使っているので、これはちょっと困ります。なにかやり方があるのかもしれませんが、自分の検索能力ではなかなか…(;´∀`)

 

筐体はこんな感じです。「(」はキートップには9の上に表示されていますが、実際はshift+8です。「)」はshift+9なんですよ。混乱しますよね(;´Д`)

あと、エンターキーが横長であまり大きくないので、よくミスタイプします。シフトキーや「キーをタイプしちゃったりしています。キーのタッチ自体は非常に小気味よく、打ちやすいので残念ですね(;´∀`)

それから、タッチパッドが大きすぎて、その両脇に手のひらを置いてタッチタイピングをする自分には邪魔です。タイプしていて、ついクリックしちゃうことが多く、それを避けてタイプできるように感覚を修正していますが、なかなか大変ですね。

 

でも、スクリーンがタッチパネルなのは非常に便利です。スマホと同じく感覚的に操作できるのはいいですね。あと、このモデルの美点としては、ディスプレイの発色が良く、エッジの出方もよく、画像などがきれいに見えるというところがあります。動画も写真も、メインマシンのWindowsPCよりはっきり良いです。次にWindowsPC買い換えるときはASUSがいいかも…。

 

それから、Androidスマホと連動して、いろんな事ができるようです。Bluetoothで連携し、ロック解除されたスマホが近くにあればパスワード無しで起動できたり、Bluetoothを介して簡易デザリングも可能だとか。いまはスマホが通信容量の少ないプランなので出先でChromebookを使うことがあれば容量を増やして試してみたいところですね。

 

これから、Android用の動画編集アプリやRAW現像アプリを入れて使い勝手を試してみようと思っています。泊まりのロングツーリングをしたときなんかに写真の現像やブログのアップができるようになるといいな〜なんて思っています。

 

現時点でわかっていることをまとめると

*長所

・起動が早い。

・各種動作も速い。

・ネットブラウジングも速い。

スマホとの連携が良い。

・(このモデルは)ディスプレイがきれい。

・キーボードのタッチが気持ちいい。

・やっぱりタッチパネルは快適。

 

*短所

→このモデルについて

・英文キーボードは日本語入力にはかなり使いづらい。

タッチパッドが大きく、ブラインドタッチにはすごく邪魔。

・ディスプレイが大きいので仕方ないが、普通のノートPCと重さが変わらない。

クラウドベースが前提なので、内蔵記憶媒体の容量が小さい。

 ↑SDメモリーカードを追加して解決

 

色々書きましたが、ともかく各種動作が早く、待たされるストレスが少ないことがすごく快適で、写真現像とOffice使いたいとき以外はWindowsPCを使う気にあんまりなれないくらいです。価格も安いので、Officeもとりあえずデータが見られていじられれば少々使い勝手が悪くても良いというのなら、コスパは非常にいいのでおすすめです。

これで、RAW現像アプリが使い物になるレベルならますますWindowsPCの出番はなくなるでしょう。

 

ともかく、これからChromebookを検討してみようかな、という方は日本語入力が大事なら日本語キーボードのモデルを選んでくださいね。そこだけクリアできたら、ASUS C425TAはおすすめマシンです。