アグリサイエンティストが行く

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ホンダ インサイト試乗記

以前、唐突にレビューを書いたホンダインサイトだが、こないだ試乗してきたので、その感想を述べてみたい。

それにしても、発売前にレビューを書いてから、ホンダを取り巻く情勢は大きく変化した。1番大きな衝撃はF1からの撤退だが、それ以外にも次期NSXの開発中止、アキュラ店の展開凍結と燃油高騰は有利に働いた日本メーカーにも今回の不況はかなり堪えたようだ。やはり、本田宗一郎氏のDNAはスポーツにこそあり、これらの縮小、休止は会社そのものの存続危機であるとしか言いようがないのだろう。会社が苦しくとも何とかやっていける目途が立つのなら、ホンダがこれらを放棄するわけがないのである。現行車種のS2000ですら、今年の7月だったと思うが生産をやめることになったらしく、そうなるとホンダのスポーツカーはシビックタイプRだけと言うことになる。

唯一の希望は、来年発売予定というハイブリッドスポーツのCR?Zだが、インサイトでも結構運転は楽しかったので、それをよりスポーツ向けに味付けしたと言うことであれば、非常に期待が持てる。また、これ以外にも軽スポーツのビートの復活が計画されていると言うことなので、環境に配慮しながらスポーツを楽しめる車なら実現性もあると思うので、そちらにも大いに期待したい。

閑話休題

さて、肝心のインサイトであるが、試乗と言ってもディーラーの近くを5分程度走っただけなので、たいしたことは言えないのだが。

まず、車両価格が189万円からというバーゲンプライスでありながら、走りの基本にはほとんど手を抜いていないと思う。少々ラフなハンドリングをしてもボディのがたつきは全くなく、ギャップを乗り越えたときのサスペンションの収まりもいい。とはいえ、それほどの悪路を走ったわけではなくせいぜいがアスファルトの段差なので、たいしたことは言えないのかもしれないが、ボディ剛性が高く、サスペンションがしっかり働いているのだと思う。

エンジンは1.3lの4気筒だが、さすがにスムーズで吹け上がりもいい。モーターアシストの不自然さもほとんど感じないし、パワーも十分である。

特筆すべきはシートの良さ。最近のホンダ車は本当にシートが良くなった。連れ合いのステップワゴン(初代)のシートは大柄なのはいいが、張りがあまりなく、体を支えるポイントも少ないので、腰の負担が大きい。そのため、レカロシートに交換したのだが、このインサイトのシートであればその必要はない。シートに十分しっかりした張りがあり、きちんと腰を支えてくれる。私は腰が悪いので、その辺は重要ポイントなのである。
もちろん、スポーツ走行にはサイドサポートが物足りないが、この車でそこまで攻める走りをする人はいまい。なので、これで十分だと思う。

インテリアは少々やりすぎの感もあり、未来的と言えば未来的だが、子供っぽいと思う。ただ、色遣いはきれいで、メーターなど見ていると落ち着いた気分にはなる。これは、荒っぽい運転を抑える働きがある・・・というのは言い過ぎか(笑)。
エコ運転度を採点してくれたり、アクセルの踏みぐあいによってメーターの色が変わったりと遊び心も満点だが、これはもしかしたら飽きてくるかもしれない。それに、エコ運転をしろ、と始終急かされているようにも感じられ、いらいらしているときには自分のような心が狭い人間の場合、腹が立つかもしれない。

いずれにしても、この車は「買い」だと思う。エコ運転度などのギミックを抜きにしても、運転そのもののの楽しみがあり、実用車としての基本もしっかり押さえている。
一番安いグレードの189万円にしても、装備が全然足りない「見せグレード」ではなく、必要な装備はきちんとそろっていて、これにオーディオさえ装備すれば不足だと思われるものはない。今は、値引きがほとんどなかろうが、総額200万円と少しで同じような装備のプリウスの車両価格より安く入手できるのかもしれないのだから本当にお買い得だと思うがどうだろうか。

最大の欠点は、シルエットがプリウスに似ていると言うことだろう。実車を見ると細部がいろいろ違うし、インサイトの方が低くスタイリッシュなのだが、運転席を頂上としてなだらかにリアエンドまで下がるルーフライン、すぱっと切り落としたリアエンドなどが共通するとどうしても似てしまうのだろうか。
そのあたり、ホンダの先代ストリームをミリ単位まで真似しながらあまり似ているように見えないウイッシュを作ったトヨタのうまさにはホンダはまだまだ及ばないのだろう。