アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

日本の食糧を支えるもの

前回のエントリー「「世界の最適地で農業を」は最適解か?」について以前にもコメントをいただいた摂津国人さんがブログで言及してくださった。同じ大前研一氏の主張である「農業の海外への持ち出し」について私とは違った視点から問題点を指摘されている。 それによると、日本の商社による海外進出は私の予想以上に進んでおり、また途上国等における農地の争奪戦についてもかなり厳しいところまで来ているという。専門家を名乗っているくせにそんなことも知らなかったのかと言われれば、悔しいので「そんなことくらいとっくに知っていたよ?ん」と言いたいところであるが、知らなかったものは仕方がない。自分の不勉強を恥じるのみである。自分は技術屋だからと技術にばかり目を向けているとこういう事になるので、もっとアンテナを拡げるよう努力したい。 さて、詳しいことについては摂津国人さんのブログをお読みいただくとして、大前氏が主張するように日本の農業を志す若者がほいほい海外へ出て行って(もちろん大前氏とて簡単に成功するとは思っていないだろうが)農作物を日本へ持ってくると言うシナリオが成立しないとしたらどうしたらいいのだろうか。 やはり私は、前回のエントリーでも触れたとおり、環境保全の観点からも国民全体で腹を括って最低限「米だけでも買い支える」事だろうと思う。現時点で具体的にいいアイディアはないが、その上で相応の努力をして収量・品質を上げればそれなりに儲かるシステムを作ることが必要である。野菜類についてはまだ勝負できる余地はあると思っている。とりあえず水稲作で農地を守ることが重要なのだ。これについては若干ニュアンスは異なると思うが、東大名誉教授の安井至先生もHPの中で同様の主張をしておられる。 しかし、ほとんどの人は農業を取り巻く現状がこうなっていることは知らないのではないだろうか。食糧確保のためにどういう方向を向いていくにせよ、国民の総意がなくてはならないだろう。状況がにっちもさっちもいかなくなるようになってしまう前に少しでも判断材料が提供できるように自分の立場から努力は続けていきたい。