アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

岡本信一さんの「土壌を簡単に考え過ぎなのだ!!!」について

農業コンサルタント岡本信一さんが書かれているブログ「あなたも農業コンサルタントになれる わけではない」に「土壌を簡単に考え過ぎなのだ!!!」lというエントリーがある。このエントリーについては、おおむね同意である。これは岡本さんらしい問題定義だ。しかし、それに直接答えになる何かを提示するわけではないが、気になることがあるので少し触れてみたい。

土壌を面で捉えている、ということに関して補足しておくと通常10aあたり肥料kgというと表層10cmで考えることが多い。土壌化学性の診断を行なう時は乾土100gあたりmgという単位を使う。土壌を風乾(日陰で自然乾燥)させ、2mm目合のふるいにかけたものから、測定したい成分に合わせた抽出法を使って抽出し、発色液を使って色の濃度測定から成分濃度を計算したり、原子吸光光度計という測定機器を使って成分濃度を測る。そして、抽出した土壌の量と抽出に使った液量から乾土100g中の成分mgを計算する。

そして、土壌の仮比重を1として(ほ場にある土壌の状態で、孔隙(隙間のようなもの)なども含んだ比重)表層10cmの成分と仮定すると、乾土100g中の成分mgは10aあたりの成分kgと同じ数字になる。

このことから、土壌の化学性診断では乾土100g中の成分mgを10aあたりkgの基準値(及び成分バランス)と比較して過不足を判断し、標準となる施肥設計から各肥料の増減を行なう。といっても、減らす場合がほとんどで増やす事はまずない。

このあたり、説明はするがあまり農家さんには理解してもらえない。自分の説明がまずいと言うのもあるだろうが、そもそも理解する気がない人も多い。しかし、理解する気がなく、岡本さんが言うように土壌を簡単に考えすぎていると同ブログの次のエントリー「農家は環境問題をどう考えるべきか」という次の世代への継続の問題解決が難しくなってくるだろう。

化学肥料の問題点は、過去のエントリーを参照していただきたいが、ここでも述べているように、日本農業の施肥による環境問題は1つは元肥偏重による環境への肥料成分の流出である。これはすばやく効く化学肥料の性質に合わせ、手間と収量、品質(主に規格に合わせた外観品質)のバランスを考えて各地の農業試験場などで試験の結果導き出されたやり方ではあるが、環境へ配慮されているとは言いがたい。化学肥料のみを使うと考えた場合、効率を無視すれば植物の生長と肥料成分の吸収曲線に合わせ、細かく回数を増やして、天候も考慮しつつ少しずつ追肥していくと品質、収量を保ったまま(食味の向上にもつながると思う)環境負荷を減らす事は出来ると思う。しかし、そこまで手間を掛けると農家の作業負担があまりに重く、栽培可能面積は極端に少なくなる。つまり、現実には不可能に近い。養液土耕という栽培方法がこれに近いが、設備投資が必要になるという欠点がある。

結局あまりまとまらない話になってしまったが、これをきっかけに土と肥料から環境を考えていただければ幸いである。