アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

愛犬リュウのこと

今回は単なる自己満足というか、どうしても書き留めておきたくなったので、書いておく。13年前に失踪したまま帰ってこなくなった飼い犬のリュウのことである。

Photo

本当は動物を飼うつもりなどなかった。犬を飼えば毎日散歩に連れて行かねばならないし、泊まりで出かけるときにはどこかへ預けなければならない。動物は心の安らぎを与えてくれる代わりに面倒も持ち込んでくるからだ。

しかし、敷地が半分山林になっているような職場にいたとき、そこへ野犬が住み着いた。その野犬が子供を生んだのだ。野犬とは言え、近くの池の改修工事に来ていた作業員の人からえさをもらい、ずいぶん人には馴れていた。だから、本当はいけないことだがその子犬たちにも作業員の人たちはえさをやり、池の工事が済んでからはうちの職場の人がかわいがっていた。

ところが、そのときの職場は温室で花を展示して公開したり、組織培養で花や野菜の苗を増殖する施設だったのだが、そこへ全国行事でやってくる皇太子さまが立ち寄ることになった。さあ大変。警察や消防が大挙してやってきて、施設の安全性をチェックするという。周辺の山林は徹底的に野犬などを排除するという話になった。そこで、親犬は一番かわいがっていたYさんが連れて帰ることになった。残った3頭の子犬をどうするかという話になったとき、自分になついていた1頭と目が合ってしまった。なつかせていた時点でダメだったのだ。そんな風に、職場近くの山林でずっとそういう関係でいられるはずもなかったのに・・・。

そんなわけで、その1頭は私が連れて帰ることになった。残りの2頭は臨時職員の人が連れて帰って飼い主を探すことになった。その子犬たちの消息は知らない。とりあえず連れ帰った子犬にリュウという名前をつけ、まだ子供のいなかった私たち夫婦の「名誉長男」となった。

子供がいなかったこともあって、車に乗せてあちこち連れて行った。誰もいない広い河川敷で(ホントはいけないかもしれないけど)リードを外し、自由に走らせてやった。そんなとき、野ウサギを見つけて追いかけて走っていき、なかなか見つからなくなってしまったこともあった。

そうこうしているうちに長女が生まれ、長男も生まれた。長女は怖がって近づかなかったが、長男は仲良くなり、おもちゃを取り合ったり(てな事をしていても噛まれたことはなかった)、一緒に犬小屋に入ったりしていた。

そうそう、長男がまだハイハイしかできなかった頃、リュウの犬小屋からすぐ近くの吐き出しの窓が開いていて、長男が外を見ようとしてかハイハイで窓から出ようとして50センチくらいの高さから落ちそうになっていた。それを見つけたリュウが「危ないぞ!」とでも言うように必死に吠え、それに気づいた嫁が見つけて事なきを得た、ということもあった。まぁ、落ちていたところでたいした怪我はしなかっただろうが(笑)。

それから、リュウは身内とそうでない人を見分ける能力に長けていた。というか物覚えが良かったのかもしれない。月に1度くるか来ないかくらいの義父や義母、義妹たちを完璧に覚えており、他人が来たら必ず吠えるのに、義父たちには全く吠えない。それどころか遠くに住んでいるため年に1度程度しか来ない私の両親すらちゃんと覚えていて吠えない。なので、吠え声が聞こえないのにいきなり玄関が開く音がしてビックリしたら親父が出張のついでにうちに寄った、というオチだった。

そんな賢いリュウだったが、ある正月、帰省のために嫁の実家に預けていたところ、鎖を外して脱走した。何があったのかはわからない。義母によると、様子がおかしいので見てみると鎖を引きずって道路に出ており、オートバイに追いかけられるようにして遠くへ走り去ったとのことだった。ずいぶん探してくれたようだが、見つからなかったと。

そのとき、パソコンでポスターを作り、嫁の実家近所に張らせてもらったり、車で走り回って名前を呼んでみたりしたがどうしても見つからなかった。その後も、似たような犬を見かけるたび名前を呼んでみたが本人に会うことはできなかった。7年間飼い、それから13年経つのでどう考えてももう生きてはいまい。

あれだけ賢いやつだったから、嫁の実家くらいからなら自力で帰ってこれそうなものだが、何かあったのか。事故でも起こしたのだろうか。

とにかく、もう一度会いたいという希望はずっと持ち続けていたが、かなわなかった。もう届くことはないが、おまえのことはずっと想っていたよと言いたい。そして、できることなら親切な人に引き取られて、幸せな一生を送ることができていた事を願うばかりである。