アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

Wikipediaの硝酸態窒素の解説が色々アレだ!

定期的に読んでいるFood Watch Japanというサイトで、少し前から連載が始まっている岡本信一さんの連載「「よい農作物」とはどんな農作物か?[14]硝酸態窒素が増える問題の本質」でWikipediaの硝酸態窒素の項目が間違っているとの記述を見かけた。そこではその間…

比嘉先生の「発酵と腐敗」

EMの比嘉先生が「EM生活」というEM関連商品の通販ページにある季刊誌「健康生活宣言」 Vol.14(PDF) で発酵と腐敗について述べておられる。これは、自分の以前のエントリー「農業の観点から見たEMぼかしの問題点と活用について」に対する反論になっているよ…

知的障害者による農作業支援が始まっている!

2年ほど前から、私の勤務する地域では知的障害者の方々による農作業補助を斡旋する事業が始まっている。 これは、県が事業として推進しているもので、JAと協力して知的障害者の福祉施設(小規模作業所など)に農家の希望を調整して農作業補助を斡旋するものだ…

ベラルーシでのEMによる放射性セシウムの移行抑制試験について

以前のエントリーで福島県における各種資材によるセシウムの植物への移行抑制試験について取り上げた。その際、比嘉先生が他の資材での抑制効果との比較について考察せず、EMオーガアグリシステムの堆肥が対象区に対してセシウムの植物への以降量が少なか…

水田で野菜栽培をすること ?輪作はなぜ必要か?

平成24年度の耕地面積は、水田が2,469,000haで畑地が普通畑、牧草地、樹園地をあわせて2,080,000haと農水省の統計では発表されている。つまり、国内の耕作地は54.3%を水田が占めているわけである。効率的食糧生産のため、瀬戸内地方や西南暖地では冬でも雪…

家庭菜園を楽しんでいる方へご注意

家庭菜園というものが流行しだしてもうずいぶん経つ。面積や利用者数などは把握していないが、どきどき目に付くので、今でも地道に行なわれているのだろう。 自分で野菜や花などを育て、収穫して飾ったり食べたりする、これは非常に楽しいことだろうと思う。…

野菜類への腸管出血性大腸菌の付着について(追記あり)

先日、北海道で死者まで出たO157による集団食中毒は、食品業者が製造した漬物が感染源であることが明らかになった。以下、北海道新聞から引用する。 注:本文中で病原菌の腸管出血性大腸菌O157を「O157」と表記していますが、この表記が妥当性を欠…

腸管出血性大腸菌の堆肥から植物体への移行について

前エントリーにおける摂津国人さんからのコメントに対し、職場で調べてみたところ、少しわかったことがあったので、返答もかねて簡単にエントリーにしてみた。ほとんど検索で見つけたので、リンク集に近いものになりました。 牛ふん堆肥での大腸菌の残存につ…

土作りはなぜ必要か

何かものすごく基本的な表題である。しかし、ここ最近のエントリーを眺めてみるに、EMをこき下ろしたり、JAに文句つけたりと必要なことではあるが非建設的な趣旨の話が多かった。何か前向きな話がしたいと思っていたところ、土作りについてまとまった話をし…

Chhomの学長は遺伝子のことを何もご存じない?

CHhom(カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー)のサイトに次のような記事が掲載された。「7/28(土)【洞爺から全国中継】自家採種のタネが最も大事な多くの理由」 ?引用開始? 生命は最初に雄が退化する。 Yの遺伝子を守る力はXの遺伝子にある。Xの…

「比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境」の問題点

こちらでもたびたび取り上げているEMの比嘉照夫氏がDigital New Dealというサイトで「比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境」という連載記事を書いている。そのほとんど(全部?)がEMに関する記事で、当然ながらEM技術の優位性等について延々と…

福島県の放射性物質除去・低減技術実証試験事業の問題点について

福島県は「民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証試験事業」において複数の農業用資材による土壌中の放射性セシウムの農作物への移行を低減する技術の実証試験を行った。その成績書をPDFで入手したが、内容に問題があり、またEMを検討資材の1つとして…

組織として信頼を得るためにできることとは

今年(平成24年)3月20日に京都で「日本の農業と環境シンポジウム」が開催された。主催は「農業生産法人 日本豊受自然農株式会社」である。シンポジウムの表題と主催者名を見る限り、何の問題もないように思える。しかし、内容を見ていくと、農業技術者として看過…

愛犬リュウのこと

今回は単なる自己満足というか、どうしても書き留めておきたくなったので、書いておく。13年前に失踪したまま帰ってこなくなった飼い犬のリュウのことである。 本当は動物を飼うつもりなどなかった。犬を飼えば毎日散歩に連れて行かねばならないし、泊まりで…

農業の観点から見たEMぼかしの問題点と活用について

今までにも何度か取り上げてきたと思うが、有機質資材としてEMぼかしというものが市販されている。また、有機志向の農業、園芸関係のサイトで取り上げられていることも多く、愛好者は多いようである。 EMぼかしとは、EM菌と呼ばれる微生物資材を利用し…

栽培の指導と現場感覚

この4月に人事異動によって担当地域が変わった。拠点とする事務所の場所が変わり、ほとんどなじみがない土地で巡回・指導をしなければいけなくなった。しかも、担当する品目も変わった。一応、以前と同じ野菜担当ではあるが、以前の勤務地ではイチゴ、ニンニ…

この冬の野菜の単価は高騰しているが

この冬、野菜の価格は高価格で推移している。少なくとも瀬戸内地方では昨年末からの低温少雨傾向で露地野菜の生育が停滞し、出荷したくても規格を満たす大きさにならず、出荷数量が極端に少なくなっている。ここへ来て降水量が増え、日が長くなってきたこと…

好塩菌による農耕地の塩類除去は可能か

以前、塩害対策についてのエントリーをあげさせていただいたが、それに関連して知人からツイッターでこんな記事を教えていただいた。 MSN産経ニュース「細菌使い水田塩分を除去 被災地の農業復旧に活用 九州大、岩手で実験」?2012.2.16 02:13 「震災後に…

新規就農相談

新規就農に関する相談の資料が回覧されてきた。うちの職場では技術指導や農業経営に関する指導(簿記や経営分析など)のほか、新規就農促進なども行っている。当然、農業をはじめたいと言う人の相談も受け付けている。新規就農担当がいて、そのあたりの窓口を…

できるだけ多くの人の技術向上を目指すために

今までに、2回ほど技術に関するエントリーを書かせていただいた(イチゴは苗半作というけれど 技術があるとはどういうことか)。いや、他にも言及しているエントリーはあるかと思うが、主題が技術なのはこの2つである。技術の底上げ、高位安定化が最終目標と…

江戸時代の農業を考える

最近、震災に伴う原発事故で反原発を唱える人が多くなっている印象である。もちろん、その声が大きいだけで本当に増えているかどうかはわからない。しかし、現実に今回の震災がもはや「想定外」でなくなってしまった今、多くの人が今までより大きな不安を原発…

小麦戦略と米消費量について

どらねこ(@doramao)さんがのエントリー「小麦戦略でお米が衰退したのか【前編】」を読ませていただいて、思うことがいろいろあり、長くなりそうなのでこちらもエントリーを起こしてお応えする事にした。 まず、どらねこさんのエントリーは「荻原由紀著、パンと…

本当の意味での「自然農法」は存在しない('11.11.18追記)

以前にもこのテーマでは何度か書いているが、エントリーにまとめたのは2年も前になるので、改めて問題点を洗い出してみたい。 まずはごくごく普通に考えて「自然」と「農法」という言葉同士が矛盾している。人工というものが「人の手によって改変されたものあるい…

締めて760円也。このくらいのリソースは払おうよ「もうダマされないための「科学」講義」

さて、当ブログ始まって以来の書評である。ニセ科学関連の問題にはずっと注意を払ってきたし、それが農業に関することならこのブログでも取り上げた来た。しかし、根性なしなので専門外のことにはあまり深入りしなかった。しかし、震災以降とくに放射能問題…

イチゴは苗半作というけれど

私がよく指導に回らせてもらっている地域のイチゴ農家では「イチゴは苗が半作や」という言葉が良く聞かれる。これはつまり、イチゴの栽培は苗作りがうまく行けば、その作は半分終わったようなものという意味である。 それだけイチゴの苗作りはややこしく、長…

減農薬は農薬を戦略的に無駄なく使うことでも実現できる

今回は農薬を効率よく使う方法について述べてみたい。表題には少々刺激的な言葉を使ってみたが、要するに無駄なくポイントを押さえ、先手先手で防除を行えば結局は農薬の散布回数を減らすことができると言う当たり前の話である。 1 病害虫防除の基礎的作戦…

モフモフッ!モフモフッ!in関西! ?ある男がマスクを通して見た世界?

初めにお断りしておきますが、当エントリーは極めて私的なオフ会のレポート記事でありますため、関係者以外がお読みになっても全く何の役にも立たず、興味も沸かないと思われます。それでもお読みになることはご自由ですが、かなり長いので必ず自己責任でお…

昔やった遊びについて語ってみた2

さて、前回ビー玉遊びについて語ってからもう1ヶ月以上たってしまった。ようやく続きを書く気になったので、前回アナウンスしてあった2番以降について語ってみよう。でも、ビー玉以上に記憶が怪しいので、それぞれは短くなるかもしれない。 2 天大中小 2…

緑肥作物と粘土鉱物等によるセシウムの除去は有効か?

3・11の大震災による原発事故以降、放射性セシウム137の土壌汚染が問題となっており、セシウムで汚染された稲わらを食べさせてしまった畜産農家から出荷された牛肉からもセシウムが検出され、これが基準値を超えたとして大きな話題となった。おそらく、その…

塩害対策その2(短め)

以前、一度塩害対策のエントリーを書いた。そのときは、以前に自分が高潮対策で作成した資料を基に一般向けに解説したものとした。今回は少し踏み込んで、除塩対策となる植物について考察してみたい。 さて、農地も大きな被害を受けた宮城県仙台市及び名取市…