アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

農業

草勢(樹勢)ってなに?

先日、若いJA職員から質問を受けた。 「すいません、ちょっと質問いいですか?」 「ええよ、何?」 「草勢って言葉あるじゃないですか。それってどういうものですか?」 ふむ。当たり前のように使っていて、きちんとした定義をあまり考えていなかった。はっとし…

【告知】第2回ひやあつカフェ開催します

テーマ:農と自然の関わりについて 話題提供:がん(主催者) 日時:平成26年8月30日(土) 14:00〜 場所:讃岐漆芸美術館 カフェコーナー 香川県高松市上福岡町2017番地4 087−802−2010 http://sanukisitsugei-gallery.at.webry.info/ …

農機を買うこと

今日、農協職員の方と話していて気が付いたことがある。農家の中には、一定の割合で農業にワクワク感を感じている人がいて(ここまではこの仕事に関わった当初からそう思っていた)、さらにその一定の割合にそのワクワク感が農業機械に向いている人がいるとい…

炭素を循環させるってどういうこと?

先日、ツイッターで「炭素循環農法ってなに?」という会話がされていた。普通に循環型農業をやっていると結果として炭素を循環させることになるのだが、わざわざそういった「農法」を名乗る以上、何か特別なことがあるのかと思って調べてみたら、基本的には炭素…

水やりのおはなし

家庭菜園であれ、プロ農家であれ、水やりは最も重要な基本技術でありながら自然にも左右される難しい技術だと思う。私は、自分自身が農業を営んでいないため説得力を欠く部分があるが、普段の指導の中からわかった基本的なところをまとめてみたい。 1 水や…

野菜(植物)の奇形はなぜ起こる? ?スーパーでは揃った形の野菜たち?

さて、津波などの災害で多くの方が亡くなられた東日本大震災からもうすぐ3年がたとうとしている。同時に、あの震災では福島第一原発が大きな事故を起こし、多量の放射性物質が放出された。その後、関係者の大変な努力によって放射性物質の多量な放出は収まっ…

ほほ染める野菜たち

今頃の野菜といえば、ブロッコリーやナバナなどアブラナ科野菜が多い。この寒い中でもそれらの野菜はゆっくりと、だが確実に大きくなっている。しかし、ここのところの低温や霜によって葉などがいためられ、畑でそれらの野菜を見かけると、外側の葉ほど赤く…

化学肥料、何が問題なのか

さて、今まで化学肥料の問題点については色々と論じてきたような気がするので、いまさらという感じもなくはないが、これをテーマとしてまとまった話をしたことはないと思うので、取り上げておこう。 化学肥料を「化成肥料」だとするとその定義は、窒素(N)、リ…

アスパラガスの美味しい時期

更新がずいぶん滞ってしまったが、それだけ筆者の引き出しが少ないということでご勘弁いただきたい。さて、今回は出来るだけ前向きなネタ、ということで作物の旬についての考察でアスパラガスを取り上げてみたい。 以前、厳寒期のイチゴが美味しい理由を解説…

「DND甦れ!食と健康と地球環境 第74回」での疑問点

相変わらず気が進まないが、比嘉照夫氏が「Digital New Deal甦れ!食と健康と地球環境 第74回 福島における2013年度のEMによる放射能対策の成果(1)」でEMでの放射線対策について述べておられるので、その問題点について指摘しておきたい。 その中で、とあ…

珍しく消費者の人と直接対話してみた

先日、高校の同窓会に出席して来た。およそ30年ぶりに会う人達ばかりだったが、よく言われるように初めだけ緊張していたが、慣れてくるとすぐ30年前と同じ感覚でしゃべることができた。 とまあ、ここまではこの文章の趣旨とは関係なさそうだが、その後行った…

求められる「断言・言い切り」と指導者の意識のギャップ

今の仕事(農業技術の普及・指導)をするようになってから、色々と技術者と生産者の意識の違い(良し悪しではない)について色々と考えさせられることが多い。特に、試験研究から普及・指導に変わったとき、研究者として良かれと思ってやっていたこと、この試験…

一般的な農家が目指している農作物とは

さて、前回のエントリー「Food Watch Japanでの反収の国際比較について」の続きである。当初はFood Watch Japanの岡本さんの連載第2回目に応じた記事にしようかと思っていたが、そちらの進展が早く、少々様相が変わってきたので、農家が出荷するに当たって目指…

Food Watch Japanでの反収の国際比較について

Food Watch Japanというサイトで岡本信一さんが連載されている「「よい農作物」とはどんな農作物か?」というコラムがある。岡本さんの考え方は自分に近いところも多く、その主張には首肯できる部分が多い。いったん連載が中断されていたのだが、特に再開後の…

自然だから美味しいって本当だろうか

このようなテーマについては、以前から幾度か取り上げてきた。農業という形態が自然とはいえないこと、そこで栽培されている植物も自然とは程遠いことはこれまでも主張してきたとおりである。だから必ず現代的技術で栽培することが必要だとは言わないが、不…

自分はなぜこんなことを始めたのか ?ぶたやまさんの「あなたの理由は何ですか?」に寄せて?

twitterで、表題にあるようなぶたやまさんのまとめを見た。そして、ふと自分はどうしてブログでこんなことを始めたのだろうと思ったが、以前にぶたやまさんと話をしたときにはすぐに頭の中でまとめられなかったので「後でブログにでも書くね」といってそのまま…

Wikipediaの硝酸態窒素の解説が色々アレだ!

定期的に読んでいるFood Watch Japanというサイトで、少し前から連載が始まっている岡本信一さんの連載「「よい農作物」とはどんな農作物か?[14]硝酸態窒素が増える問題の本質」でWikipediaの硝酸態窒素の項目が間違っているとの記述を見かけた。そこではその間…

比嘉先生の「発酵と腐敗」

EMの比嘉先生が「EM生活」というEM関連商品の通販ページにある季刊誌「健康生活宣言」 Vol.14(PDF) で発酵と腐敗について述べておられる。これは、自分の以前のエントリー「農業の観点から見たEMぼかしの問題点と活用について」に対する反論になっているよ…

知的障害者による農作業支援が始まっている!

2年ほど前から、私の勤務する地域では知的障害者の方々による農作業補助を斡旋する事業が始まっている。 これは、県が事業として推進しているもので、JAと協力して知的障害者の福祉施設(小規模作業所など)に農家の希望を調整して農作業補助を斡旋するものだ…

ベラルーシでのEMによる放射性セシウムの移行抑制試験について

以前のエントリーで福島県における各種資材によるセシウムの植物への移行抑制試験について取り上げた。その際、比嘉先生が他の資材での抑制効果との比較について考察せず、EMオーガアグリシステムの堆肥が対象区に対してセシウムの植物への以降量が少なか…

水田で野菜栽培をすること ?輪作はなぜ必要か?

平成24年度の耕地面積は、水田が2,469,000haで畑地が普通畑、牧草地、樹園地をあわせて2,080,000haと農水省の統計では発表されている。つまり、国内の耕作地は54.3%を水田が占めているわけである。効率的食糧生産のため、瀬戸内地方や西南暖地では冬でも雪…

野菜類への腸管出血性大腸菌の付着について(追記あり)

先日、北海道で死者まで出たO157による集団食中毒は、食品業者が製造した漬物が感染源であることが明らかになった。以下、北海道新聞から引用する。 注:本文中で病原菌の腸管出血性大腸菌O157を「O157」と表記していますが、この表記が妥当性を欠…

腸管出血性大腸菌の堆肥から植物体への移行について

前エントリーにおける摂津国人さんからのコメントに対し、職場で調べてみたところ、少しわかったことがあったので、返答もかねて簡単にエントリーにしてみた。ほとんど検索で見つけたので、リンク集に近いものになりました。 牛ふん堆肥での大腸菌の残存につ…

土作りはなぜ必要か

何かものすごく基本的な表題である。しかし、ここ最近のエントリーを眺めてみるに、EMをこき下ろしたり、JAに文句つけたりと必要なことではあるが非建設的な趣旨の話が多かった。何か前向きな話がしたいと思っていたところ、土作りについてまとまった話をし…

Chhomの学長は遺伝子のことを何もご存じない?

CHhom(カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー)のサイトに次のような記事が掲載された。「7/28(土)【洞爺から全国中継】自家採種のタネが最も大事な多くの理由」 ?引用開始? 生命は最初に雄が退化する。 Yの遺伝子を守る力はXの遺伝子にある。Xの…

「比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境」の問題点

こちらでもたびたび取り上げているEMの比嘉照夫氏がDigital New Dealというサイトで「比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境」という連載記事を書いている。そのほとんど(全部?)がEMに関する記事で、当然ながらEM技術の優位性等について延々と…

福島県の放射性物質除去・低減技術実証試験事業の問題点について

福島県は「民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証試験事業」において複数の農業用資材による土壌中の放射性セシウムの農作物への移行を低減する技術の実証試験を行った。その成績書をPDFで入手したが、内容に問題があり、またEMを検討資材の1つとして…

組織として信頼を得るためにできることとは

今年(平成24年)3月20日に京都で「日本の農業と環境シンポジウム」が開催された。主催は「農業生産法人 日本豊受自然農株式会社」である。シンポジウムの表題と主催者名を見る限り、何の問題もないように思える。しかし、内容を見ていくと、農業技術者として看過…

農業の観点から見たEMぼかしの問題点と活用について

今までにも何度か取り上げてきたと思うが、有機質資材としてEMぼかしというものが市販されている。また、有機志向の農業、園芸関係のサイトで取り上げられていることも多く、愛好者は多いようである。 EMぼかしとは、EM菌と呼ばれる微生物資材を利用し…

栽培の指導と現場感覚

この4月に人事異動によって担当地域が変わった。拠点とする事務所の場所が変わり、ほとんどなじみがない土地で巡回・指導をしなければいけなくなった。しかも、担当する品目も変わった。一応、以前と同じ野菜担当ではあるが、以前の勤務地ではイチゴ、ニンニ…