アグリサイエンティストが行く

農業について思ったことを書いていきます。少しでも農業振興のお役に立てれば。

農業

この冬の野菜の単価は高騰しているが

この冬、野菜の価格は高価格で推移している。少なくとも瀬戸内地方では昨年末からの低温少雨傾向で露地野菜の生育が停滞し、出荷したくても規格を満たす大きさにならず、出荷数量が極端に少なくなっている。ここへ来て降水量が増え、日が長くなってきたこと…

好塩菌による農耕地の塩類除去は可能か

以前、塩害対策についてのエントリーをあげさせていただいたが、それに関連して知人からツイッターでこんな記事を教えていただいた。 MSN産経ニュース「細菌使い水田塩分を除去 被災地の農業復旧に活用 九州大、岩手で実験」?2012.2.16 02:13 「震災後に…

新規就農相談

新規就農に関する相談の資料が回覧されてきた。うちの職場では技術指導や農業経営に関する指導(簿記や経営分析など)のほか、新規就農促進なども行っている。当然、農業をはじめたいと言う人の相談も受け付けている。新規就農担当がいて、そのあたりの窓口を…

できるだけ多くの人の技術向上を目指すために

今までに、2回ほど技術に関するエントリーを書かせていただいた(イチゴは苗半作というけれど 技術があるとはどういうことか)。いや、他にも言及しているエントリーはあるかと思うが、主題が技術なのはこの2つである。技術の底上げ、高位安定化が最終目標と…

江戸時代の農業を考える

最近、震災に伴う原発事故で反原発を唱える人が多くなっている印象である。もちろん、その声が大きいだけで本当に増えているかどうかはわからない。しかし、現実に今回の震災がもはや「想定外」でなくなってしまった今、多くの人が今までより大きな不安を原発…

小麦戦略と米消費量について

どらねこ(@doramao)さんがのエントリー「小麦戦略でお米が衰退したのか【前編】」を読ませていただいて、思うことがいろいろあり、長くなりそうなのでこちらもエントリーを起こしてお応えする事にした。 まず、どらねこさんのエントリーは「荻原由紀著、パンと…

本当の意味での「自然農法」は存在しない('11.11.18追記)

以前にもこのテーマでは何度か書いているが、エントリーにまとめたのは2年も前になるので、改めて問題点を洗い出してみたい。 まずはごくごく普通に考えて「自然」と「農法」という言葉同士が矛盾している。人工というものが「人の手によって改変されたものあるい…

イチゴは苗半作というけれど

私がよく指導に回らせてもらっている地域のイチゴ農家では「イチゴは苗が半作や」という言葉が良く聞かれる。これはつまり、イチゴの栽培は苗作りがうまく行けば、その作は半分終わったようなものという意味である。 それだけイチゴの苗作りはややこしく、長…

減農薬は農薬を戦略的に無駄なく使うことでも実現できる

今回は農薬を効率よく使う方法について述べてみたい。表題には少々刺激的な言葉を使ってみたが、要するに無駄なくポイントを押さえ、先手先手で防除を行えば結局は農薬の散布回数を減らすことができると言う当たり前の話である。 1 病害虫防除の基礎的作戦…

緑肥作物と粘土鉱物等によるセシウムの除去は有効か?

3・11の大震災による原発事故以降、放射性セシウム137の土壌汚染が問題となっており、セシウムで汚染された稲わらを食べさせてしまった畜産農家から出荷された牛肉からもセシウムが検出され、これが基準値を超えたとして大きな話題となった。おそらく、その…

塩害対策その2(短め)

以前、一度塩害対策のエントリーを書いた。そのときは、以前に自分が高潮対策で作成した資料を基に一般向けに解説したものとした。今回は少し踏み込んで、除塩対策となる植物について考察してみたい。 さて、農地も大きな被害を受けた宮城県仙台市及び名取市…

有機物施用とアミノ酸吸収について

少し前まで、植物は窒素を硝酸イオンやアンモニアイオンなどの無機状態でしか吸収しないと思われていた。もちろん、それが主要な吸収形態であることは間違いないが、最近ではアミノ酸やペプチドの形でも根から直接吸収されることがわかっている。また、たん…

葉ネギの外葉を剥くと言う行為に意味はあるか(脱線しまくり)

ネギという野菜は、関西以西では京都の九条ネギに代表される葉ネギ(青ネギとも呼ばれる)として使われることが多く、関東及び東日本では根深ネギ(白ネギ)が主流である。当然ながら、瀬戸内地域ではただ単にネギと言えば葉ネギであり、白ネギはわざわざ「白ネギ…

津波からの農地の回復にむけて ?塩害対策について?

このたびの東日本大震災では、農作物に対する放射性物質による汚染が実際に起こってしまい、現場廃棄が相次いでいる。また、西日本ではその実感はないが、風評被害も広がっており、福島県産、茨城県産のみならず他の東北、関東の農作物が軒並み価格を下げ、…

TPPでの稲作をどう考えるか

このエントリの本題には関係ありませんが、このたびの東北関東大震災に際し、犠牲者の皆様に哀悼の意を表するとともに、被災者の皆様が一日も早く日常に復帰されるよう、また関係者の皆様のご努力に感謝申し上げます。 <追記> いきなりで申し訳ないが、改…

やっぱり反対しておく、TPP

今までTPPに関してははっきりした態度を表明していなかった。それは、自分の中でTPPに対しての考えがしっかりとまとまっていなかったからだ。では今回、エントリを挙げるに当たって考えはまとまったのかというとまだである。しかし、そんなことを言い…

農作物の適正価格とは ?簡単に答は出せないけれど?

今まで「新しい時代の農業へスムーズな移行を」と「就職先としての農業を考える」の2つのエントリーで農作物生産のコストについて取り上げてきた。そこでは、自分の担当品目であるネギとイチゴを例にして規模と収益についてざっくりとした計算をした。最近は景気…

クレーム処理の是非 2

前回のエントリー「クレーム処理の是非」で土耕栽培のイチゴに高設栽培の写真シールが張られていた事によるクレームのことを書いた。そのことについて友人からtwitterでいくつか指摘があったので、追記しようかと思ったのだが、そのあたりについてわかりやすい…

クレーム処理の是非

先日、我が県の消費生活担当部署に、県産イチゴについてのクレームがあった。一部のイチゴのパッケージにJAがバイヤーと相談して生産者の写真をシールとして貼るようにしたものがある。また、生産者名が箱に押印してあったり、シールとして(写真のものと…

日本の食糧を支えるもの

前回のエントリー「「世界の最適地で農業を」は最適解か?」について以前にもコメントをいただいた摂津国人さんがブログで言及してくださった。同じ大前研一氏の主張である「農業の海外への持ち出し」について私とは違った視点から問題点を指摘されている。 それ…

「世界の最適地で農業を」は最適解か?

実は、数年前から「大前研一 ニュースの視点」というメールマガジンを購読している。世の中にあふれかえるニュースはあまりに膨大すぎてすべて読むことはできない。なので、重要なもの、自分に必要なものを見分ける能力(リテラシー)が必要であるが、ただ目の前…

技術があるとはどういうことか

スポーツにおいて、技術があるということは比較的わかりやすいものだろう。基本に忠実に、しかし状況に応じてプレーをこなせるという事になるだろうか。まぁ、多少の異論はあろうが、おおむね間違ってはいないだろう。野球で言えば、イチローが外角低めぎり…

イチゴにもその他の農作物にも、人間にも暑かった夏

いまさら話題として取り上げるのもどうかと思うが、今年の夏は非常に暑かった。・・と過去形で語っても良いものかどうか悩むところではある。今朝(9/24)は半袖だと肌寒いくらいだったが、まだ30℃を大きく越すような日が来ないとも限らない。まぁしかし、もう…

有機農業の会合で

先日、有機農業担当者の会合に出席した。 県の関係者のほか、JAの販売担当者、有機農業推進の民間団体、有機や減農薬にこだわった民間産直の経営者や有機農産物を生産する農業法人などが集まり、今後の当地域における有機農業の推進方策について議論を行っ…

COP10でEM菌

またしても他人のところから引っ張ってきたネタで申し訳ないが、大阪大学サイバーメディアセンター教授菊池誠氏のブログkikulogでCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)のパートナーシップ事業として「EMで海・河川の浄化 全国EM団子・EM活性液投入」とい…

就職先としての農業を考える

今までのエントリーを総合すれば、私は農業が現代では割に合わない職業であると言っている事になると思う。現場で生産者の生の声を聞くにつけ、どうしてもそう思わざるを得ないのだ。しかし、それでも農業を職業として選ぼうという人が絶えることはない。も…

口蹄疫・・感染拡大どうなる?

宮崎県で発生した口蹄疫の勢いが止まらない。 自分は、畜産は専門外なので、有効な対策の提言も、高所大所からの発言もするだけの知識を持ち合わせていない。アグリサイエンティストを名乗りたいなどと言いながら恥ずかしい話だが、少しずつでも勉強を重ねて…

農林水産大臣政務官まで・・・このていたらく

以前、科学ライターの松永和紀氏のブログに、農水省メールマガジンでの山田農林水産副大臣のメッセージが引用されており、見事に上っ面しか考えていないその文章を批判されていたが、平成22年1月15日の第376号に掲載されていた佐々木農林水産大臣政…

状況は厳しいが・・・逆にチャンスか?

さて、ずっと昨年の総括をしたいと思っていたが、どうにもうまくまとまらない。とりあえず総括とは言えないと思うが、感じたことをつらつらと書き連ねてみたい。 まず、昨年は特に後半で農作物の単価が低迷した。景気が悪く、デフレと言われる中でいろいろな…

農家が減少しているから行政も規模縮小・・これでいいのか?

政権交代以来、新政権は様々な動きを見せているが農林行政についてはまだその全体像は見えてきていない。戸別保障制度もその詳細についてはまだわからないことが多いし、はっきりした評価を下せる段階にはない。しかし、現時点では農業の振興につながるかど…